出雲について

伊耶那岐命(いざなぎのみこと)
出雲の歴史 第3章

伊耶那岐命の物語は、愛する妻を追って黄泉の国へと旅立った神様のお話です。

天地が初めて生まれたとき、大地は水で満たされ、油やクラゲのように不安定に揺れていました。天の神々は、伊耶那岐命(いざなぎのみこと)と伊耶那美命(いざなみのみこと)という男神と女神に命じました。
「この不安定な大地を固めなさい。」
伊耶那岐と伊耶那美は天の浮橋に立ち、アメノヌボコという天の宝の槍を地に突き刺し、「コーロ、コーロ」という音を立てながら大地を広げました。やがて槍の先から落ちた塩が積もり、オノゴロ島ができました。

伊耶那岐と伊耶那美はこの島に降り立ち、多くの子供を産みましたが、伊耶那美は火の神を産んだ際に大やけどを負い、亡くなってしまいました。伊耶那岐はもう一度妻に会いたくて、黄泉の国へと向かいました。黄泉の国の宮殿で伊耶那美に会ったとき、伊耶那岐は心から言いました。
「愛しい妻よ、私たちが築こうとしている国はまだ完成していません。どうか、私のためにこの地上に戻ってきてください。」

しかし、伊耶那美はこう答えました。「それは残念です。私は黄泉の国の食べ物を口にしたので、もう戻ることはできません。でも、あなたが迎えに来てくれたので、この国の神様に相談してみます。その間、どうか私を見ないでください。」そう言って、伊耶那美は黄泉の国の宮殿に入りました。

しかし、待つのが耐えられなくなった伊耶那岐は、髪に挿していた櫛の歯を一本折り、それを松明として灯し、宮殿に入りました。そこで見たのは、うごめく蛆に覆われた伊耶那美の姿で、頭や胸、お腹が雷神に焼かれたように焦げていました。その恐ろしい光景に驚いた伊耶那岐は、黄泉の国から逃げ出そうとしましたが、伊耶那美は「私に恥をかかせるなんて」と言い、黄泉醜女(よもつしこめ)を追わせました。

伊耶那岐は逃げる途中で、黒いかずらの髪飾りを投げました。それが地面に落ちると、真っ赤なブドウのつるが生えました。醜女(しこめ)はそのブドウを拾って食べましたが、再び伊耶那岐を追いかけ始めました。そこで伊耶那岐は竹の櫛の歯を折って投げると、竹の子が生えました。醜女(しこめ)がそれを引き抜いて食べている間に、伊耶那岐は再び逃げることができました。

その後、伊耶那美は体内にいた雷の神々と1500人の軍勢を伊耶那岐の後を追わせました。伊耶那岐は剣を抜き、後ろに振りながら逃げましたが、雷の神々と軍勢はまだ追いかけてきました。伊耶那岐が黄泉比良坂(この世とあの世の境)にたどり着くと、そこに生えていた桃の木から3つの実を取り、雷の神々を待ち伏せしました。実を投げつけると、彼らは黄泉の国へと戻っていきました。

ついに伊耶那美自身が伊耶那岐を追いかけてきました。伊耶那岐は、千人の力が必要なほど重い岩で黄泉比良坂を塞ぎました。そのため、二人はその岩を挟んで向かい合いました。

伊耶那美は言いました。
「最愛の夫よ、あなたがこんなことをするなら、私はあなたの国の人を毎日千人殺します。」

それに対して伊耶那岐は答えました。
「愛しい妻よ、あなたが毎日千人を殺すなら、私は毎日千五百の産屋を建てます。」

このことが、毎日千人が亡くなり、千五百人が生まれる理由だと言われています。この物語に出てくる黄泉比良坂は、出雲の「伊賦夜坂」とされています。