出雲について

大国主大神命(おおくにぬしのみこと)
出雲の歴史 第6章

素戔嗚尊の娘に恋をした神様のお話です。
出雲の国を治めるための試練を乗り越えたのは、大国主大神でした。

大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)という神様は、もともと大穴牟遅命(おおあなむちのみこと)と呼ばれていました。ここでは、彼が大国主大神という名前を得た物語をご紹介します。

大穴牟遅命は、兄弟たちから何度も危険な目に遭わされました。そのため、彼は木の国へ逃げ、大屋毘古(おおやびこ)という人の宮殿に身を寄せました。しかし、そこにも兄弟たちが追いかけてきました。大屋毘古は大穴牟遅命を助けながら言いました。 「根の国(死者の国)へ行きなさい。そこには素戔嗚尊(すさのおのみこと)がいるわ。」

大穴牟遅命は根の国へ向かい、素戔嗚尊の娘である須勢理毘売(すせりひめ)と出会いました。二人は目が合うと、次第に惹かれ合うようになりました。須勢理毘売は大穴牟遅命を父の素戔嗚尊に引き合わせました。
「こんな立派な方が訪ねてきました。」

素戔嗚尊は大穴牟遅命を試すことにしました。まず、彼を「蛇の部屋」で寝かせました。この部屋では、蛇が大穴牟遅命を噛もうと群がっていました。心配した須勢理毘売は、自分の肩にかけていた領布(ひれ)という長い布を渡しながらこう言いました。
「蛇が噛みそうになったら、この布を3回振ってください。」

大穴牟遅命が言われた通りにすると、蛇は動かなくなり、彼を噛みませんでした。こうして、大穴牟遅命は無事に「蛇の部屋」から出ることができました。

次に、素戔嗚尊は大穴牟遅命を「ムカデとハチの部屋」に入れました。そこには、たくさんのムカデとハチが彼を襲おうとしていました。須勢理毘売はもう一枚の布を肩から取り、彼に渡して言いました。
「ムカデやハチが襲いかかってきたら、この布を3回振ってください。」
彼が言われた通りにすると、ムカデとハチは動かなくなり、襲ってきませんでした。こうして、大穴牟遅命は無事に「ムカデとハチの部屋」から出ることができました。

その後、素戔嗚尊は大穴牟遅命を広い野原に連れて行きました。素戔嗚尊はブンブンと音を立てる矢を放ち、それを探してくるよう命じました。大穴牟遅命が野原に入ろうとしたその時、素戔嗚尊は野原に火を放ち、強烈な炎で周囲を囲みました。大穴牟遅命はたちまち炎に囲まれてしまいました。

その時、一匹のネズミが現れてこう言いました。
「中は広くて大きい、外の入り口はちっちゃいよ。」(地面の穴のことを指していました)
「なるほど、そうすればいいのか。」
大穴牟遅命は地面を踏みつけ、隠れ穴を開けてそこに飛び込みました。

火事が過ぎ去り、彼は無事でした。しばらくして、ネズミがブンブンと音を立てる矢を探しに行き、彼のもとに持ってきました。しかし、不思議なことに矢の羽はなくなっていました。子ネズミたちが食べてしまったのです。

矢が戻ると、素戔嗚尊は大穴牟遅命を家に連れて帰り、巨大な部屋に入ると新たな命令を出しました。
「私の髪からシラミを取れ。」
大穴牟遅命は言われた通りに素戔嗚尊の頭を覗き込みました。すると、そこにいたのはシラミではなく、たくさんのムカデでした。

須勢理毘売はムクの木の実と赤土を大穴牟遅命に渡し、耳元でささやきました。 「この実をかじって、赤土を口に含んでから一緒に吐き出して。父は、あなたがムカデを一匹ずつかみ砕いていると思うはずよ。」

須勢理毘売の言った通りでした。素戔嗚尊は「ムカデを噛んで吐き出す様子、なんて魅力的なんだろう」と思い、安心して眠りにつきました。

「今がチャンス、一緒に逃げましょう!」

大穴牟遅命は素戔嗚尊の長い髪を部屋の梁に結びつけ、家の扉を大きな岩で塞ぎました。

その後、素戔嗚尊の剣や弓矢、琴を盗み、須勢理毘売を背負って逃げ出しました。
走る途中、琴が木々に触れて地面が揺れ、音が響きました。
素戔嗚尊は目を覚まし、立ち上がると部屋の梁を引き倒しました。

素戔嗚尊が髪を梁からほどいている間に、二人は遠くへ逃げてしまいました。素戔嗚尊は彼らを黄泉比良坂(この世とあの世の境)まで追いかけましたが、二人はさらに遠くへ逃げていました。素戔嗚尊は叫びました。

「剣や弓矢を使って兄弟たちを追い払いなさい。そして大国主大神の名を取り、須勢理毘売と一緒に宇迦山のふもとに行き、天に届くほどの高い柱を持つ宮殿を建てて住みなさい。」

言われた通りにして、大穴牟遅命は大国主大神となり、性格の悪い兄弟たちを追い払い、新しい国を作り上げました。